「私のリアルでの名前は、『青い三角』とでも言いましょうか」
カゼッタが言った。
「おそらく私の祖先が、日本で言う扇状地のような三角形の平地の一つに住んでいたことに由来する名前だと思います。
私の住む星のことは、私たちは『空の下』と呼んでいました。
日本語の『天下』と同じですね。だから、まあ、私の星のことは、『テンカ星』とでも呼んでください」
「宇宙一武闘会とか開催されてそうな星だな(笑)」
スズキが応えた。
「それが、地球で言うどの恒星系かは秘密だね?」
「まあ、言っても大勢に影響は無いでしょうが、一応、そうですね、秘密ですw」
「じゃあ、答えられそうな質問をもう一つ。
前から疑問に思ってたんだけど、どうやって君はこのゲームに参加してるんだい?
wwwに参加するのはHTTPプロトコルを真似ればいいだけだから、簡単だろう。でも、このネトゲをプレイするためには、ActiveXの動く環境が必要だろう?
君たちはPCを手に入れて動かしてるのかい?」
「いいえ、ハードウェアは持っていません。
大変でしたよw。インテルCPUのエミュレーターを作ったんです。」
「じゃあ君は、全くアーキテクチャの異なる君たちの星のコンピューターから、wwwに参加してるって訳か・・・ウィンドウズも自作したのかい?」
「いえ、それは、オンラインで購入しました」
「購入(笑)誰かのクレジットカードで支払ったわけだね?」
「そのあたりは、ノーコメントです」
「大した技術力だなぁ。地球の技術で君たちを超えているものって、無いのかな?」
「私たちの星に無かったものならたくさんありますが、技術的に我々に理解不能というのは無いかもしれません…私はテクノロジーは専門ではないので、断言はできませんが。
でも、地球人の思想や言動で、驚かされ、興味を引かれたものはたくさんありますよ」
「ほう、たとえば?」
「あなた方の種は、男女という固定的な性別を持っていますよね。
一方は常に産み育てる側で、他方は遺伝情報を提供するだけ。形状も一見してそれと分かるほど異なり、一方は他方より肉体的に頑強です。
私の星では、これほどの性差のある社会性生物は、性別によって役割分担を強いられた生き方しかできません。
『両性に平等な社会』など、あり得ないのです。
それを、あなた方の社会は達成している…いや、目指しています」
「まあ、わが種も歴史の大部分を階級制あるいは奴隷制社会で過ごしてきたんだけどね(笑)」
「これは喜ばしい事でした」
「喜ばしい?なぜ?銀河連合の人権規定を満たしているとか?(笑)」
「私は、全ての知的生命が守るべき倫理基準があるとか、そんなことは考えていませんw。
でも、自分たちの考える『真理』や『正義』に普遍性があるように見えるのは、嬉しいことです。そうではないですか?」
「ああ、それはそうだね。
僕も、君と話をしていて、僕の信じる“理性”が宇宙に共通の基盤を持つ、少なくとも進化論的アトラクタの一つであると確信できて嬉しく思ってるよ」
「“進化論的アトラクタ”?」
「考えずに感じてくれたまえ。
それより、君の種族には固定的な性別が無い、のかい?」
「そうです。我々には性別はありません。交配するどちらの個体も、卵と精子にあたるものを提供できます。どちらが出産するかは全く任意です」
「でも、それならどちらも出産は避けたいだろう?
どういう形態で子供を作るにせよ、出産や育児は大変な負担だろう?」
『青い三角』は、カゼッタの表情を微笑に切り替えた。
「確かに、子を産む側の負担とリスクは大きいです。
でも、その者は“歌”を子に伝えられる」
「歌?」
「そうです、私たちは子供に、生涯で一度だけ聴くことが出来る“歌”を歌ってやることができます」
「話がよくわからなくなってきたぞ・・・」
「私たちの種では、子供が生まれて約3ヶ月(地球時間)の間に一度だけ、親が子に特別な“歌”を聴かせられます。
“歌”は魂を伝えるのです。
正しく“歌”がやり取りされると、子は親と同じ・・・性格になります」
「ふーん。人生訓みたいなものかな」
「それよりはるかに深いものですw。
“歌”について我々は長年研究を重ね、それが脳の一部分の構成をそっくりそのまま子供に受け渡すものであることを突き止めました」
「君たち自身にも分からなかったのか・・・そうか、それは君たちの種の生物学的機能なんだね」
「そうです。私たちと、近縁数種に特有の機能です」
「脳のメモリダンプか・・・。
同じようにして脳全体の音声データ化はできないの?」
「無理です。その部位だけが特殊な構造をもっていたのです。
そしてその部位は、『性格』とでも言うべき、刺激に対する基本的な反応性を規定する部分でした」
「へえ・・・。でも、記憶を転送できないんじゃあ、自分の人格のコピーとは言えないだろう?なぜそれが−自分と同じ性格の子を作ることが−そんなに魅力的なのか、分からないなぁ」
「私たちはそれが『魂』だと信じているからです。
・・・まあ、そういった欲望が本能に刻まれている、と言うことなんでしょう。」
「その機能は、知的生物の幼児期の生存率を上げるのに役立っただろうね」
「そう、私たちもそれが“歌”の進化した理由だと思っています。
“歌”について研究する過程で私たちの脳生理学は飛躍的に発展しました。今では・・・というか、最終的には、私たちは脳の全データを取り出すことに成功しました」
「じゃあ、それをクローンにロードして、永遠の生命を得ることが可能になった、のかな?」
「いえ、取り出したデータを他の脳に入れることには、成功していません・・・」
「じゃあ、役に立たないなぁ」
「それが、そうでもなかったのです」
「あ」
「なんですか?」
「客が来たそうだ
おちr」
*** スズキ がログアウトしました***
・・・つづく
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
- 2007/09/05(水) 06:36:51|
- 猪野熊アース
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