11月12日以降、アメリカが何の動きも見せなかったことで、アジア、アフリカを中心に多くの国々が“銀河連合”の要求を受け入れると公式に発表し始めた。
現在、アメリカ大統領は急病ということで、副大統領が執政に当たっている。
雨木は、事態が次の段階に進んだ、と考えた。
もはや、世界の銀河連合参加を食い止めることは出来ない。
彼がそう考えたのは、アメリカがただ沈黙している、と見ているからではない。
12月13日午前8時頃、日本海を哨戒中の巡視船「しらせ」が、海上にミサイルの発射と思しき水柱が立つのを観測、船のレーダーでも、しばらく高速の飛行物体を捉えていた。
米軍に情報を求めると、翌14日になって
「巡航ミサイルの発射実験を行った」
との回答があった。
実際そうだったのかもしれないし、日本政府は、現在の緊張した国際情勢の中では通告なしの発射実験も仕方ない、と、抗議の一つもなくその説明を受け入れた。
が、雨木は違うシナリオを思い描いていた。
アメリカは、宇宙人のレーザー攻撃によって世界に与えられた衝撃を、より大きな衝撃で打ち消そうとしたのではないか、つまり、より厳しい罰を北朝鮮に与えることで、世界の目を自分に向けさせようとしたのではないか。
一発の、核ミサイルで。
しかし、その試みは潰えたのだ。
ミサイルの故障か、あるいは・・・おそらく、宇宙からのレーザー攻撃によって。
そして、アメリカは沈黙した。
しかし、この想像の通りだとすると、恐ろしいことだ、と雨木は思った。
宇宙人は、任意の発射地点から打ち出された6m足らずの高速飛行物を、数十分のうちに打ち落とせるということなのだ。
これはつまり、もはや人類に制空権はない、ということだ。
それとも−彼は用心深く考えた−奴等は既に地上工作員を多数地球に送り込んでいて、ミサイルを止められたのは、彼等からの情報があったからこそなのかもしれない。
いずれにせよ、アメリカは世界の覇権を“銀河連合”と争う戦いには負けたのだ。
雨木の考える戦いの第一段階は、人類の完敗という形で終わった。
これからは、宇宙人に逆らって余計なダメージを負った国が衰えてゆくことになる・・・。
だが、と雨木は思う。
これで闘いが終わったわけではない。むしろ、これからが彼の想定していた永い戦いの始まりだと思っていた。
そのために彼はこうして自ら動いているのだ。
雨木は大きくハンドルを切ると、巨大な“NAGOM”のロゴを掲げたビルの、地下駐車場へ続くスロープへ車を乗り入れた。
・・・つづく
テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学
- 2007/08/27(月) 14:54:57|
- 猪野熊アース
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