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素見歓迎  *ハ リ ミ セ*

自作小説発表ブログ

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帰郷 -校門・桜・老婆・共食いを使って-

 綻びはじめた桜の下で、僕は待った。
3年ぶりに見た、母校の校門。
「佐藤、君?」
突然後ろから呼びかけられて、僕はびっくりする。
君島さとみさん。
3年振りに会った彼女は、ますます綺麗になっていた。
セーターにハーフコート、ジーンズと、お嬢さんらしい格好にもかかわらず、どこかしら妖艶な雰囲気が漂っているように思えた。
気圧された僕が、何も言えずに彼女の顔を見詰めていると、
「佐藤君、なんか、かっこよくなったね」
と、社交辞令を先に言われてしまった。
「君島さんこそ、き、綺麗だよ」
何のひねりも無く誉め返すなんて、我ながら子供っぽくて嫌になる。しかも、少し噛んでしまった。
「あれ?智久は?」
「ああ、高橋君?」
「一緒じゃなかったの?松崎も…」
彼女はコートの袖口についた糸屑を払っていたが、目だけを僕に向けて、
「来ないの。口実に使っちゃった」
と言った。
「だって、二人だけで会おうって言ったら、なんか、デートみたいじゃない」
少し甘えるような、拗ねたような口調で言う。
僕は背中が強張ったようになって、ただただ頬が赤らむのを抑える努力をしていた。
「ほんと、春休みこっち帰ってきてくれてて良かったァ」
「たまたまさ、じいさんの三回忌だったんだよ。
なんか、願わくは 花の下にて 春死なん、って、西行法師みたいなこと言ってて、本当にその通りになっちゃってさ。まあ、春休み中で丁度いいって言うか」
「佐藤君もそんなこと思う?」
「え」
「死ぬなら、桜の花の咲く下がいいとか」
「んー。そりゃあ、そんな中で死ねたらいいなとは思うけど」
「良かった」
「え?」
「そうかぁ。あのおじいちゃん、死んじゃったんだー。あたしも何度か会ったことあったよね」
「まあ、もういい齢だったし。
そういえば、君島さんは昔ハムスター大事にしてたよね」
僕は、「死ぬもの」からの連想で「ハムスター」と言ってしまった。
「さとみでいいよ。
カミーラ、噛み癖があるからカミーラ。
今も飼ってるよ」
「へー、何代目?」
「あのカミーラよ」
「へー!ハムスターって寿命2年くらいじゃなかったっけ?」
「カミーラは特別なの」
「じゃあ、もうすっかりお婆さんだよね」
「そんなことないよ、毛並みもツヤツヤだもん」
「そうなんだ。さとみ…ちゃんが優しくしてるからなんだろうね」
思い出話をしていると、幼馴染の距離感に戻っているような気がしてきた。
「一緒に飼ってたオスのポンタも元気?」
「ポンちゃんはとっくに死んじゃった」
「ああ、そうなんだ」
「ハムスターってほら、共食いするじゃない?
カミちゃんがね、みんな噛み殺しちゃうの」
「マジ?怖えーなぁ、カミちゃん」
「そんなことないよ、人間には、あたし以外噛み付いたこと無いもん」
「それでも…仲間を噛み殺して、自分だけは何時までも若いなんて…
なんか、吸血鬼みたいだよね」
「やだ。カミちゃんは日光浴びても平気よ」
「まあ、冗談だけどさ。
でも、吸血鬼って、人間以外でも成立するよな」
「どういうこと?」
「だって、狼男なんかは、まず狼には無理じゃない?」
「狼狼になっちゃうもんね」
「フツーだよ、それじゃ。
でも、吸血鬼は、どんな種族でもそれぞれ同種の血を吸うのが居ておかしくない」
「そういえばね、カミちゃんは好きな子しか噛み殺さないのよ」
「へえ?」
「何か、吸血鬼っぽくない?好きな人の血を吸いたいなんて」
「わかんないよ」
「好きな人」なんて言葉を悪戯っぽい表情で言われて、訳も無く僕はにやけてしまった。
「でも、もしカミーラが吸血鬼だったら、あたしも吸血鬼かもよ?噛まれてるんだもん」
「異種間でも吸血鬼ウイルスが感染するのならね」
「しないかな」
「さあ。そもそも吸血鬼がウイルス性のものかどうかから調べなきゃ」
話をするうち、いつの間にか僕らは川沿いの、土手の上の道を歩いていた。
彼女が楽しそうに川原へと、芝を踏んで駆け下りる。
僕も子供に戻ったような気分でそれを追いかけた。
自然の成り行きで彼女の手を掴んで止めた時には、二人とも息が切れていた。
「ねえ、今日はなんで僕を呼んだの?」
彼女はまっすぐ僕を見詰めたまま、息が整うまで無言でいた。
そして、体がぶつかるほど近くに一歩踏み出して、僕の顔を見上げて言った。
「佐藤君を食べたいからじゃ、だめ?」
彼女の体から甘い香りが立ち上っていた。
僕は、薄く開いた赤い唇に吸い寄せられるように、接吻けた。
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