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素見歓迎  *ハ リ ミ セ*

自作小説発表ブログ

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太古の海 -喫茶店・海・ハムスターを使って-

「ああ、あの、床に置かれたハムスターの檻ですか」
マスターはグラスを磨きながら応えた。
「潜水艦のカナリヤみたいなもんです。この店は呪われていましてね」
その言葉が冗談に聞こえないほど、不吉に薄暗い喫茶店だった。
僕がこの店に入ったのは、バイクでツーリング中に道に迷ってしまったからだ。
日は暮れるし、なぜか携帯のGPSは反応しないしで、途方にくれてとりあえず見えた灯りに吸い寄せられてしまったのだ。
「この辺りは昔海だったんですが・・・」
まだマスターは喋っている。
「大潮の夜には、太古の海がこの店の高さまで上がってくるんですよ」
「何を言ってるのか、解らないよ」
芝居がかったマスターの話し方も気に入らなかった。
僕は、店を出ようとした。
「ほら、見て御覧なさい」
マスターが床に置かれたハムスターの檻を指差す。
見る前で、檻の中のハムスターがのたうち、足掻き、やがて痙攣と共に動かなくなった。
「な、ど、どういうことだ?」
動揺する僕を楽しそうに横目で見ながらマスターが言う。
「幻の海は、目には見えないんですけどね」
突然、獣じみた目を真直ぐに僕に向けた。
「溺れるんです」
僕は店のドアを引いたが、びくとも動かない。
「わかった。信じる。ハムスターが溺れた。さあ、どうすれば助かるか教えてくれ」
「あのハムスターは、助かるために置いてるんじゃあありません」
足元が、目に見えない冷たいものに包まれた。
「楽しみが来るのを、知るためです」
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