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素見歓迎  *ハ リ ミ セ*

自作小説発表ブログ

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赤い糸通信

 「美崎さん」
名前を呼ばれて、辺りを見回すが、誰もそれらしき人影が無い。
「美崎さん」
きゃっ、と、思わず声が漏れる。
足元だ、声は机の下から聞こえていた。
覗き込むと、机の前板の隙間から手が伸びている。
「この、赤いLANケーブル、美崎さんのPCのだよね?」
向かいの席の薮田課長の声だ。
確かにその手には、私のPCに繋がる赤いLANケーブルが握られている。
「は、はい」
手に向かって返事をすると、それは仕切りの向こうに引っ込んだ。
ダニエル書だっけ?こんなシーンがあったのは…。ふと、そんな事を思う。

「ちょっと、これ抜いていい?今HUB交換してるんだけど」
「あ、はい」
一応書きかけの書類を上書き保存しておいて、
「いいですよ」
応えると、なにやら向かいの机の下辺りでごそごそあって、薮田課長の頼りない頭が姿を現す。
あ、この場合頼りないのは内容ではなくて主に毛量の事。
「あー、これ長さぎりぎりだなぁ。長瀬君、長瀬君」
今度は隣の席の見目麗しい新人、長瀬君に声をかける。
「ちょっと、君のPCのLANケーブル、僕のと換えていいかな?」
「あ、はい、いいすよ」
また机の下でごそごそ。

 やがて、満足気な顔で席に戻った薮田。
何だかニヤニヤしている。
LANケーブルを整理できてそんなに嬉しいか。
「美崎さん」
ニヤニヤ顔のまま、また私を呼ぶ。
「今ね、このHUBに刺さってる内、君と私のLANケーブルだけ赤色なの」
とりあえず私は『何言ってるの、このオッサン』という顔で見返す。
「赤い糸で結ばれてるね、僕たち」
セクハラ発言をあからさまに無視すると、隣で長瀬君が「ははは」と笑った。


いいんだけどね。
まあ、結局あのセクハラオヤジと同レベルって事なんだけどね。

私と長瀬君を結ぶ、秘密の赤い糸は断ち切られてしまった。
定時後私は机の下に潜り込んで、自分のPCのLANケーブルを、青い、会社の支給品に戻した。
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大きな桜の木の下で~この題名で書け~

 町で一番大きな、二の丸公園の腰掛桜。
美沙は時雨れる花弁を浴びて、迷子のように立ち尽くしていた。

「よお、なに?」
僕は努めて普段通りに、片手を上げて挨拶をする。
「何って、だって」
もうすぐ入学で、ばらばらになっちゃうし、だから何って訳じゃあないけど、最後にゆっくり話したくて、と、彼女は何だか拗ねた様にとつとつと話す。
「アイス、買おうか」
僕はソフトクリーム二つを屋台で買い、公園の中央の猿山を眺めつつちびちび舐める。
二人の間に沈黙が訪れると、
何故美沙は今日、ここで話をしたがったのか。
僕は、そんな事を考え始めてしまう。

別れの思い出を、桜で飾りたかったのか。
美しい自分を僕に印象付ける作戦か。
これから離れて過ごしても、僕が折に触れ思い出す、そんな象徴的なシーンを演出しておこうということか。

 「あのね、真崎くん」
美沙が僕の顔を覗き込むようにして声を掛ける。
「きっと、私達」
離れて住むと、だんだん疎遠になって、一年も経たずに別れてしまう。
これが、もしかしたら最後のデートかもしれないと思う。
だから、
「真崎くんの前ではずっとカワイク幸せな美沙で居たかったんだけど、言っちゃうね」
いつも僕の前で浮かべていた、はにかみを含んだ微笑みが消えた。
「真崎くんはきっと、この女はなんで桜の下で会いたがったんだろう、って考えてる。
 自分を可愛く見せる演出だとか、美しい別れのシーンに浸りたいんだろうとか、きっとそんな意地悪なこと考えてる」
そこで彼女はふっ、と笑ってくれ、僕は少しほっとした。
「でもね、きっと君には私がここを選んだほんとの理由はわからない」
上目遣いに、真っ直ぐ目を覗き込まれて、僕はうろたえた。
「でしょ?」
「い…いや、僕はそんな。君は、ただ素直に綺麗な桜が見たかったんだと思っているよ」
彼女は残りのアイスクリームを、猿山の中に投げ込んだ。
「君が、約束したの」
そう一言言った。

 そして、かろうじて僕は思い出した。
去年の五月、僕らが付き合いはじめた頃、一緒に桜が見たかった、と美沙が言ったことを。
僕が桜の名所を挙げると、そんなところじゃなくていい、二の丸公園の桜でいい、と彼女は応えた。
「あんなところでいいのなら、これから何度でも連れてくさ」
確かに僕はそう言ったのだ。

 「君をうそつきにしないためだよ」
少女は笑った。

このシーンを僕は一生忘れないだろう。
ぼんやりとそう考えた。

米澤穂信氏大好き!(笑)

最近すっかり米澤穂信氏にはまってしまって、“古典部”最新刊が文庫化されていなかったので仕方なく主義に反してハードカバー(カバーはソフトな装丁だったけど)を買ってしまったほど。

日常の謎解きの名手としてではなく、青春小説あるいは恋愛小説の俊英として。

僕もああいうものを書きたい。

ここで言う『ああいうもの』とは、ミステリーを軸に始まるか始まらないかの恋愛模様を描き、その中で人格の交流と成長を描くもののこと。

他人との交流、特に恋愛沙汰のように深いレベルでの衝突は、若者に限らず幾つの者にとっても変化と成長をもたらす。
僕は今まで恋愛のそういう面について軽視しすぎていた。

二つの人格が、深い意味で出会うまでの物語を書きたい。

しかし、『恋愛物』は苦手だ。それはもう確実に。
恋愛の中に現れる気の利いたシーン、ありそうなトラブルなどを軸にストーリーを引っ張るのは無理だ。
ということは、SFあるいはミステリーを軸にするしかない。
しかしもともと僕自身がSF者であるから、SFで始めてしまうとそれはもう確実に科学読み物か思索小説にしてしまう。

なので、米澤メソッドなのである。

日常に潜むミステリー。
ややコミック的(コミカルと言う意味ではない)な人物設定。

これで書く。

しかし、自分のリアルな高校生活を思い出すに、『マンガなどにありがちな、伝統はあるが受験に不熱心で自治活動・クラブ活動の盛んな高校』という点は充分及第点なのだが、色っぽい話が全くと言っていいほど無い。(『全く無い』と言わないところは最低限の矜持。)
そこで、何かの昔話を本歌取りしてキャラクターを決めたいと思う。
例えば、西遊記の沙悟浄を主人公、孫悟空をヒロイン、三蔵法師を先輩?姉?猪八戒を友人、金角銀角をライバル(後に友人)の双子。とか。

…うーむ。

とにかく、試験的にやってみよう!
[ 2010/03/28 13:19 ] 錦の裏 | TB(0) | CM(0)

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