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素見歓迎  *ハ リ ミ セ*

自作小説発表ブログ

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味噌汁の使い方

「今週の能力再開発講座でさあ、『味噌汁の、飲む以外の使い道5つ考えろ』って課題を出されちゃってさ」
「何、お前まだそんなの行ってたのかよ」
「ああ、行ってるさ。俺は自分に潜在してる力を100%発揮したいからね」
「潜在してないよ。お前は今でも100%力を出し切ってお前らしく生きてるよ。自信持てよ」
「持てないよそんな言い方じゃ。むしろ少し落ち込んだよ。じゃあお前味噌汁の使い方考えてみろよ」
「何が『じゃあ』なんだ。お前のそういう子供じみたテキトーな所をまず治す方がいいんじゃないか」
「いいんだよ、俺はダメな所を治すより、良い所を伸ばす方が大成する子なんだよ」
「ダメな所も治そうよ」
「とにかく、味噌汁、何か言ってみろよ。日頃天才だの発想王だのうそぶいてんだから」
「言ってねえよ、発想王とか。そのネーミングが既に発想ダメだろ」
「何だ、出来ないんだ。もうお前も普通の人になっちまったんだな」
「んだよ、普通の人って。いいよ、やってやるよ。味噌汁の使い方だろ?
色々あるじゃん。流しに捨てて河川を塩分で汚染するとか、手枷や鉄格子に注いで腐食を早めるとか」
「『破獄』かよ、そういう薀蓄とかマメ知識とかいいんだよ。発想してくれよ」
「えーと、屍体の胃に注入してアリバイ工作」
「なんだそりゃ」
「実家住みの女を殺してだな、家族が寝静まった後で家に運び込んで、台所に残ってる味噌汁を胃の中に注入する。検死で胃の内容物調べたときに、家に帰ってから殺されたってことになるだろ」
「お前が死体を家まで運ぶんなら、それでもアリバイ成立するわけ無いじゃん」
「んー、じゃあ、殺害現場の誤認だな、サブトリックとして使う」
「注入するときに食道に出来る傷や、全く消化されてないことが怪しまれないかな」
「シリコンゴム製のパイプとか、なんかあるだろ。消化は・・・味噌汁に青酸カリを入れておいて、飲んですぐ死んだように見せれば説明つかないかな。もちろんもともと青酸カリで毒殺しておくんだけど。鍋の中の味噌汁にも青酸カリが入ってるから、帰宅してそれを飲んで死んだことになる」
「その娘の実家がその夜味噌汁を出すとどうして分かる?死体運び込んでから無いと分かったらどうしようもないぜ」
「そん時は、その家で作った梅酒とか、なんか探すさ」
「梅酒じゃ俺の課題と関係ねえよ。味噌汁じゃなきゃ」
「じゃあ、あれだ。彼女が目の前で実家に電話して『遅くなっても帰るから、味噌汁残しといてよ、お母さんの味噌汁美味しいんだから』とか言ってるのを聞いて、思いつくんだ」
「お前、そんな良い娘を、よく殺すなあ・・・」
「いいんだよ。もう、この際仕方ないんだよ」
「寝てるとは言え、人の居る家に死体を運び込んで作業するのは、難しくないか」
「う・・・最悪、台所まで辿り着けさえすれば、今味噌汁を飲んで倒れた、という演技をして・・・」
「救急隊員が来て、体温の低さを確認されたら終わりじゃないか?硬直が出てたら家に運び込むこと自体難しいだろうし。硬直が解けるまで待ってたら、死斑なんかに矛盾出そうだし」
「時代設定で逃げれないかな。江戸時代で、捕物帖物にする」
「江戸時代の検屍で、胃の内容物調べないだろ」
「じゃあ、こんな感じで。舞台は1930年代のアメリカ。胃の内容物から、最後にした食事を割り出して事件逮捕に結びつけた教授が、新聞などで報道されて有名になる。それが自分の住んでいる地区なのを知った犯人が、このトリックを思いつく。当時は死斑の研究はまだ進んでいなかった、と言うことで」
「アメリカ?味噌汁だよ?」
「日系人社会での犯罪だね。太平洋戦争開戦直前の世相なんかも書き込んで、日系人に対する迫害とか、日系人が収容所に入れられるとかの歴史的エピソードも絡めて、作品に厚みを出すんだ。主人公が現代の日本人で、曽祖父の残した文書の謎を探るうちに真相に辿り着くとか、そういう構成にして」
「出すんだじゃねえよ、使えねえアイデアを無理やり使うために、能力再開発講座の課題に俺何ページ費やさなきゃいけねえんだよ」
「じゃあ俺が書くよ」
 彼の代表作、「ロサンゼルス1939:味噌汁の謎」誕生の瞬間であった。
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猪野熊アース 2-1

 新宿歌舞伎町のつぼ八は、金曜の夜とあってひどく混雑していた。
座敷の一間には、城戸大学ラグビー部の10人ほどが、2次会であろうか、すっかり出来上がった感じで大騒ぎをしていた。
何かの罰ゲームか、一回生の一人が無理やりズボンを脱がされようとしているらしく、
「やめてくださいよ、マジで。マジで!」
「いいからチン○見せろよ山口!」
と、大声が店内に響き渡った。
もともと静かに飲む店ではない。他の客も始めは気にする風も無かったが、エスカレートし続ける馬鹿騒ぎに、次第に眉をひそめる顔が増えてきた。
屈強な、しかもかなり性の悪い酔い方をした若者の集団とあって、店の者も声を掛けかねていた。
 と、学生達の座敷と隣の境の襖が開いた。
50がらみの、痩せて小さな角刈りの男が紺色の戦闘服に身を包んで立っていた。
「兄さん方、お楽しみは結構だが、店ェ貸し切っての遊びじゃねぇんだ。ちっとは他の客の迷惑ってもんを考えなすっちゃどうでぇ」
低いが意外に良く通る声で言った。
酒に焼け、異様に深い皺を頬に刻んだその貌は、一見路上に生活する老人を思わせたが、鋭い目付きに崩れた凄みが漂っていた。
一目でカタギではないとわかる風情である。
男の背後には、やはり白や紺の戦闘服の男達が、飲みの手を止めて成り行きを見守りながら座っている。
学生達は、一瞬気を呑まれて黙り込んだ。
「オ、押忍、気を付けます」
主将らしき一人が、胡坐のまま頭を下げて応えた。
戦闘服の男は暫く部屋の中を見回した後、それ以上何も言わずに襖を閉めた。
やがて、抑えてはいるが隣に聞こえる程度の声で、学生達が話を始めた。
「何だよ、今の」
「右翼だろ右翼」
「右翼って何よ」
「何お前右翼知らないのかよ。あの『宇宙戦艦ヤマト』とか大音量で流してる車あるじゃん」
「ああ、選挙カーみたいな」
「あれだよ」
「何ソレ、怖いの?」
「怖いんじゃネ?何せ、アタマ悪そうだし」
 聞こえてくる声に、白い戦闘服の若者が無言で立ち上がろうとした。
「やめろ、タケシ。今は公安が目ェ光らせてんだ。こらえろ」
隣に座った四十年配の男が肩を押さえて止めると、タケシと呼ばれた若者は、小さく頷いて腰を落とした。
 右翼団体“愛国神撰隊”は、構成員数20人ほどの小ぢんまりとした組織だった。
社会不安の強まっている折から、大いに街頭で宇宙人に膝を屈した政府の弱腰を叩いて、名も売り、企業献金も稼ぎたい所だったが、この所の政府の締め付けは非常に厳しかった。
テロ行為などを行う者を出し、“銀河連合”にレーザー攻撃の口実を与えるのを避けたいのだ。
極左、極右、新興宗教などには全て公安が張り付き、軽微な罪でも捜査を入れて圧力をかけていた。
今は酔っ払い同士のケンカであっても、起こすわけには行かなかった。
 20分程して、城戸大学一行が店を出た。
部員の一人が、怪しげな店に案内すると言い出し、「先に帰る」と去った2人を除いて、皆が裏路地に入った時、「ごん」という鈍い衝突音と、くぐもった呻き声が後ろから聞こえた。
酔って足元のおぼつかなくなった仲間が、何かに躓いたのだろうと思った一人が振り返ると、洋酒の空き瓶らしきものを片手に振りかざした白い服の男が空中にいた。
撲り倒した最後尾の男を踏み台にして、跳躍したらしい。
 跳びかかって来たのは、タケシだった。

・・・つづく
[ 2007/10/04 12:57 ] 猪野熊アース | TB(0) | CM(0)

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