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素見歓迎  *ハ リ ミ セ*

自作小説発表ブログ

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猪野熊アース 1-10

 「特許庁のお役人さんやてなぁ」
パーティションの外で葛城常務が待っていた。
「特許庁の役人さんが訪ねてくるなんて事、あるんやなぁ」
「そうですねぇ、僕も聞いたことがないです」
「一応わしも挨拶しとこう思てな」
葛城常務はNAGOM本社が京都にあったころからの生え抜きらしい。
人当たりが良く、気配りの出来る、この業界には珍しく(と、佐藤は思っていた)「大人」を感じさせる人柄だった。
佐藤の入社以来、常務は何かと面倒を見てくれている。
どうも、理系の元助教授などと言うものは、まともな人付き合いが出来ないと思っているらしい。
もちろん佐藤は、楽なのでその扱いに甘んじている。
 12階、第3応接室に着いた。
ノックしてドアを開けると、蟇蛙のような風貌の人物が、皮椅子に埋もれるようにして座り、出された茶をすすっていた。
「ああ、どうも」
男が立ち上がり挨拶をする。
「私、特許庁の方から参りました、雨木と申します」
男が名刺を差し出した。
「特許審査第四部長 雨木 伸一郎」とあった。
「私、技術開発担当常務の、葛城と申します。以後、宜しくお願い致します」
佐藤は慌てて上着のポケットを探ったが、名刺はなかった。
「あの、すみません。名刺の方を持ってきておりませんで・・・私、シミュレーター開発研究部部長、佐藤と申します」
「いえ、いえ、結構です。本日は佐藤先生にお会いしに来たのですから、改めての名刺は必要ありません」
すぐに雨木がフォローを入れたが、常務の『理系人間に対する偏見』はまた強化されたのだろうな、と佐藤は思った。
「さて・・・」
皆が腰を下ろすと、雨木が口を開いた。
「会社の方に伺わせて頂きながら恐縮なのですが、本日はですね、佐藤先生の過去の特許の件でお話に上がりまして、ええ、個人情報の絡みもありまして、まず先生と2人だけで話をさせていただければ、と・・・」
「ん?あ、ああ、そうですか」
一瞬の間の後、雨木の言葉の意味を飲み込んだ常務が、あたふたと席を立った。
「いやいや、これは気付きませんで。では、私はこれで」
「まことに申し訳ございません」
常務は佐藤に目で挨拶をすると、部屋を出て行った。
二人きりになると、雨木が身を乗り出した。
「佐藤先生」
「はい」
雨木は胸ポケットに手をやると、もう一枚名刺を取り出した。
「私、こういうものです」
名刺を、先程佐藤が受け取って置いた名刺の横に、並べるように置く。
今度の名刺には「防衛事務次官 雨木 伸一郎」とある。
「防衛省、ですか」
佐藤の貌に動揺が走るのを、雨木は見逃さなかった。
「どうしました?」
「い、いえ、なんだか、物騒な話なのかな、と思いまして」
雨木の唇の一方の端が小さく吊り上った。
「・・・先生に危険はありません。
少なくとも、私は先生を危険な目に遭わせるつもりはありません。
このような失礼な方法でお会いしたのも、」
と、佐藤の目の前の2枚の名刺を示し、
「先生の安全を考えてのこと、というのが理由のひとつです」
言いながら雨木は後から出した方の名刺を、ポケットに戻した。
「すみません、この名刺は今日は持ち帰らせていただきます」
「ええ、それは構いませんが・・・
安全を考えて、って、どういうことですか?この会社にスパイがいるとでも?」
「スパイ、そうですね、その可能性も否定できませんが、この会社にいるということはないでしょう。
それよりも私は、通信が盗聴されていると考えています。
無線、有線、インターネット・・・」
「盗聴?一体誰に・・・
ああ、“銀河連合”に、ですか?」
佐藤の声は何故か、やや余裕を取り戻したように聞こえた。
雨木はそれを、揶揄と取ったようだった。
「可笑しいと思われるかもしれませんが、我々はそれなりの情報を元に推測しているのです。
現時点で、敵を過小評価することは致命的なミスにつながる、と考えています」
「はあ」
「で、私がこちらに伺った理由なんですが・・・
「以前、先生が作られたスポーツ戦略シミュレーター、あれは、非常に柔軟性の高い造りになっているそうですね?」
「はあ、まあ、不必要に処理の重い物になっていましたね」
「例えば、それは、ある地形での火器を使った戦闘をもシミュレート出来る程に、ですか?」
「そうですね・・・武器のスペック、重量などのデータが入力できるなら・・・それと、双方の勝利条件が設定できれば・・・一応可能だと思います」
「相手が宇宙人でも?」
「宇宙人の体の構造や生理化学的データがあれば、それと、宇宙人が携帯する武器があるならそのスペックも必要ですね・・・」
「そのデータというのは、宇宙人が実際に戦っている映像でもかまいませんか?」
「そうですね・・・なにもはっきりとは言えませんが、映像から推測した値を暫定的なデータとして、シミュレーションを構成することは出来るでしょうね」
佐藤は、思わず訊いた。
「一体、何をさせるつもりなんですか?」
雨木は、細い目を見開き、上目遣いに佐藤を見た。
「テロ戦です」
「はあ?」
「宇宙人共は、上空からの圧倒的武力を持っています。
逆らえばどの国のどこの基地でも、工場でも破壊することが可能です。
地球上のどの国家にも勝ち目はありません。
しかし、彼等はどうやら地球人を滅ぼそうとしているのではない。地球人の手を借りて地球で何かをしようとしている。
そして、それは妨害可能です」
「それで、テロ戦ですか」
「そう。この場合、民衆は皆人類の味方ですから、テロリストは非常に有利です。
問題はですね」
雨木は茶碗の冷めた茶を一口啜った。
「彼等が“銀河連合”として何度もこうした侵略を続けてきたのなら、当然彼等は何らかの、原住民の反逆を封じる手立てを持っているはずだ、と言う事です」
「反逆を封じる手立てですか・・・」
佐藤は、演繹を続ける雨木の考えに興味を覚え始めた。
「それは、どんなものでしょう?」
「さあ、理系ではない私には、具体的にどんな手段が可能なのかは判りかねますが・・・強力なテレパシーのようなものを使うとか、人間の脳に寄生する人工生命を作るとか、擬似人間を作って支配階級に仕立て上げるとか・・・あるいは、単純に無数の小型戦闘ロボットを街中に徘徊させるとか」
「人々に何の不満もない暮らしを提供する、とか?」
「それは人類がまだ実現できない究極のテロ対策ですな」
雨木は乾いた笑みを浮かべた。
「もちろん、そのテロ対策は恐るべき物ですが・・・今は考慮から外しましょう。
「とにかく、奴等に何か手があるのは確実でしょう。
そこで、こちらにも切り札が要る」
「戦闘シミュレーターが切り札ですか?」
「その、中核となる一部です。
我々は、高度に組織化されたテロ戦を世界規模で挑みます。
誰も経験したことのない、宇宙人相手の破壊工作や暗殺の仕方を、我々が世界に教えるのです。
戦闘シミュレーターがその方法を教えてくれる。そうでしょう?
初めは敵のデータも少なく、犠牲の多い戦闘になるかもしれないが、戦えば戦うほど我々には敵のデータが集まり、戦術はより有効なものになる。違いますか?」
「それは・・・」
佐藤は唾を飲み込んだ。
「多少は役に立つかもしれませんが・・・多くの人間が死ぬ事になりますよ?
スポーツの試合だって、よほど力の差がない限りシミュレートした通りには行かないものです」
雨木は薄く笑ったような表情のまま、小さく頷いた。
「承知の上です。それでも、我々には習熟すべき戦術が必要です。それを極めれば百戦百勝のスーパーソルジャーに成れるという、理想の戦闘術がなければならないのです」
「絵に描いた餅かも知れませんよ」
「餅の絵があれば人は集まります」
この男は、未来を見ているのか、それとも妄想に浸っているのか、佐藤は少し不安になった。
「あなたが言っているこれは、政府の方針なんですか?自衛隊の戦力をそうした戦闘に向けられるという事なんですか?」
雨木は暗く笑った。
「この国の政府が、そんな正しい決断を下せるわけがないでしょう。
これは私の個人的な行動です。しかし、非公式にですが、自衛隊の人員や兵器を使えるだけのパイプは、既に出来上がっています」
「で、私にも参加しろと」
「NAGOM社の上層部には話を打ち明けて協力してもらう必要がありますが、その前にあなたの意思と能力を確認したかった。
こうしてお話して、確信しました。先生はこの作戦に必要な人物です。
先生、ご協力いただけますね?」
「もちろん、出来るだけのことはします」
勢いに飲まれたように佐藤は即答していた。
一瞬、雨木は吐かれた約束を念押すような視線を、佐藤に据えた。
「では、今日はまあ、このくらいで。
またこちらから連絡差し上げます」
雨木が、特許庁職員の顔に戻って、上滑りな調子で言った。

「なんだか、大変なことになって来ちゃったよ」
佐藤は、顔も知らない友に、心の中で報告した。

・・・つづく
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[ 2007/09/18 17:32 ] 猪野熊アース | TB(0) | CM(0)

猪野熊アース 1-9

 「私のリアルでの名前は、『青い三角』とでも言いましょうか」
 カゼッタが言った。
「おそらく私の祖先が、日本で言う扇状地のような三角形の平地の一つに住んでいたことに由来する名前だと思います。
私の住む星のことは、私たちは『空の下』と呼んでいました。
日本語の『天下』と同じですね。だから、まあ、私の星のことは、『テンカ星』とでも呼んでください」
「宇宙一武闘会とか開催されてそうな星だな(笑)」
スズキが応えた。
「それが、地球で言うどの恒星系かは秘密だね?」
「まあ、言っても大勢に影響は無いでしょうが、一応、そうですね、秘密ですw」
「じゃあ、答えられそうな質問をもう一つ。
前から疑問に思ってたんだけど、どうやって君はこのゲームに参加してるんだい?
wwwに参加するのはHTTPプロトコルを真似ればいいだけだから、簡単だろう。でも、このネトゲをプレイするためには、ActiveXの動く環境が必要だろう?
君たちはPCを手に入れて動かしてるのかい?」
「いいえ、ハードウェアは持っていません。
大変でしたよw。インテルCPUのエミュレーターを作ったんです。」
「じゃあ君は、全くアーキテクチャの異なる君たちの星のコンピューターから、wwwに参加してるって訳か・・・ウィンドウズも自作したのかい?」
「いえ、それは、オンラインで購入しました」
「購入(笑)誰かのクレジットカードで支払ったわけだね?」
「そのあたりは、ノーコメントです」
「大した技術力だなぁ。地球の技術で君たちを超えているものって、無いのかな?」
「私たちの星に無かったものならたくさんありますが、技術的に我々に理解不能というのは無いかもしれません…私はテクノロジーは専門ではないので、断言はできませんが。
 でも、地球人の思想や言動で、驚かされ、興味を引かれたものはたくさんありますよ」
「ほう、たとえば?」
「あなた方の種は、男女という固定的な性別を持っていますよね。
一方は常に産み育てる側で、他方は遺伝情報を提供するだけ。形状も一見してそれと分かるほど異なり、一方は他方より肉体的に頑強です。
私の星では、これほどの性差のある社会性生物は、性別によって役割分担を強いられた生き方しかできません。
『両性に平等な社会』など、あり得ないのです。
それを、あなた方の社会は達成している…いや、目指しています」
「まあ、わが種も歴史の大部分を階級制あるいは奴隷制社会で過ごしてきたんだけどね(笑)」
「これは喜ばしい事でした」
「喜ばしい?なぜ?銀河連合の人権規定を満たしているとか?(笑)」
「私は、全ての知的生命が守るべき倫理基準があるとか、そんなことは考えていませんw。
でも、自分たちの考える『真理』や『正義』に普遍性があるように見えるのは、嬉しいことです。そうではないですか?」
「ああ、それはそうだね。
僕も、君と話をしていて、僕の信じる“理性”が宇宙に共通の基盤を持つ、少なくとも進化論的アトラクタの一つであると確信できて嬉しく思ってるよ」
「“進化論的アトラクタ”?」
「考えずに感じてくれたまえ。
それより、君の種族には固定的な性別が無い、のかい?」
「そうです。我々には性別はありません。交配するどちらの個体も、卵と精子にあたるものを提供できます。どちらが出産するかは全く任意です」
「でも、それならどちらも出産は避けたいだろう?
どういう形態で子供を作るにせよ、出産や育児は大変な負担だろう?」
『青い三角』は、カゼッタの表情を微笑に切り替えた。
「確かに、子を産む側の負担とリスクは大きいです。
でも、その者は“歌”を子に伝えられる」
「歌?」
「そうです、私たちは子供に、生涯で一度だけ聴くことが出来る“歌”を歌ってやることができます」
「話がよくわからなくなってきたぞ・・・」
「私たちの種では、子供が生まれて約3ヶ月(地球時間)の間に一度だけ、親が子に特別な“歌”を聴かせられます。
“歌”は魂を伝えるのです。
正しく“歌”がやり取りされると、子は親と同じ・・・性格になります」
「ふーん。人生訓みたいなものかな」
「それよりはるかに深いものですw。
“歌”について我々は長年研究を重ね、それが脳の一部分の構成をそっくりそのまま子供に受け渡すものであることを突き止めました」
「君たち自身にも分からなかったのか・・・そうか、それは君たちの種の生物学的機能なんだね」
「そうです。私たちと、近縁数種に特有の機能です」
「脳のメモリダンプか・・・。
同じようにして脳全体の音声データ化はできないの?」
「無理です。その部位だけが特殊な構造をもっていたのです。
そしてその部位は、『性格』とでも言うべき、刺激に対する基本的な反応性を規定する部分でした」
「へえ・・・。でも、記憶を転送できないんじゃあ、自分の人格のコピーとは言えないだろう?なぜそれが-自分と同じ性格の子を作ることが-そんなに魅力的なのか、分からないなぁ」
「私たちはそれが『魂』だと信じているからです。
・・・まあ、そういった欲望が本能に刻まれている、と言うことなんでしょう。」
「その機能は、知的生物の幼児期の生存率を上げるのに役立っただろうね」
「そう、私たちもそれが“歌”の進化した理由だと思っています。
“歌”について研究する過程で私たちの脳生理学は飛躍的に発展しました。今では・・・というか、最終的には、私たちは脳の全データを取り出すことに成功しました」
「じゃあ、それをクローンにロードして、永遠の生命を得ることが可能になった、のかな?」
「いえ、取り出したデータを他の脳に入れることには、成功していません・・・」
「じゃあ、役に立たないなぁ」
「それが、そうでもなかったのです」
「あ」
「なんですか?」
「客が来たそうだ
おちr」
*** スズキ がログアウトしました***

・・・つづく
[ 2007/09/05 06:36 ] 猪野熊アース | TB(0) | CM(0)

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